1936年(昭和11)のこの日、五私鉄疑獄事件に関する裁判で、大審院は元鉄道大臣小川平吉をはじめ8人の被告を有罪としました。
これは昭和時代の出来事です。少し詳しく覗いてみましょう。
これは2分程度で読める記事です。
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1.解説
この事件は、田中義一内閣の鉄道大臣小川平吉をめぐる贈収賄事件です。
小川平吉が秘書の春日俊文(元政友会代議士)を通じて北海道鉄道・伊勢電鉄・東大阪電鉄・博多湾鉄道・奈良電鉄から収賄し、各社に政府買上げや新線認可の便宜を図ったというもので、1929年(昭和4)に関係者が検挙されました。
その各社の罪状をみておきましょう
北海道鉄道
営業不振となっていた北海道鉄道(現在の千歳線)の社長の犬上慶五郎が代議士の青山憲三経由で小川に国有化要請を要請し、その関連で20万円の収賄が行われたとされています。
伊勢電気鉄道
伊勢電気鉄道(現在の近鉄名古屋線)が、桑名駅〜名古屋市への路線延長の免許申請に当たり、同社社長の熊沢一衛が、同社取締役でもあった代議士伊坂秀五郎に政界への配慮を求め、その関連で熊沢が小川の秘書春日に12万円の収賄が行われたとされています。
東大阪電気鉄道
過去に2回、大阪~奈良間の鉄道申請を却下されていた東大阪電気鉄道発起人の田中元七が、白井勘助経由で小川大臣に免許交付を依頼し、その関連で15万円の収賄が行われたとされています。
博多湾鉄道汽船
貴族院議員でもある博多湾鉄道汽船の太田清蔵社長が、福岡から飯塚への路線延長計画の資金調達のため現在の香椎線を鉄道省へ売却する要請を出した際、政友会幹部の富安保太郎貴族院議員経由で小川に9.5万円の収賄が行われました。
奈良電気鉄道
今の近鉄京都線を敷設した奈良電気鉄道が大阪への路線延長の免許を申請するに当たり、上記の東大阪電気鉄道を抱きこみ、30万円を提供する代わりに半分の株式引き受け権と、役員の選定優先権を得ました。しかし東大阪電気鉄道への免許交付と同時に、奈良電大阪延伸線への免許も交付されたので、その権利を120万円で京阪電鉄社長の太田光凞に売却しました。その際に差額の90万円を奈良電鉄に入金せず、同社専務長田桃蔵と奈良電の監査役を兼務していた太田、吉川善照奈良電常務が横領したとされています。
こうした贈収賄事件に対し、1936年(昭和11)のこの日、大審院で8人全員に対して有罪判決が下されました。小川は懲役2年、そして追徴金19万2000円の刑に処せられました。
この疑獄事件の被告に有罪が確定した結果、小川平吉は失脚し、さらに私鉄各社もそれぞれに大きな影響を被りました。
北海道鉄道
国有化(買収)案件が撤回され、新規事業凍結。
伊勢電気鉄道
同社経営が昭和恐慌の影響もあり悪化し、大阪電気軌道傘下の参宮急行電鉄に合併。
東大阪電気鉄道
免許を受けた新線の建設を行えず、後に免許を失効。
博多湾鉄道汽船
国有化(買収)案件が撤回され、新規事業凍結。
奈良電気鉄道
免許を受けた新線の建設を行えず、後に免許を失効。
とまぁ、五社とも目論んだことが達成出来なくなりました。こうした政界との癒着事件は、政党政治への不信感を増大させたのでした。
2.他の年、この日の記事
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今日はここまでです。
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